吃音のつらさ

「自己紹介お願いします」

吃音をもった人が一番つらい場面です。

  • うまく発音できないことを他人に知られるかもしれない
  • 自分が恥ずかしい思いをするかもしれない
  • まわりの空気をぶち壊すかもしれない
  • みんなから馬鹿にされるかもしれない

話す前からそんな不安が胸の中をかけめぐります。

みんなが当たり前にできることができない辛さ。

「ほとんどの人が当然のようにできているのになぜ自分だけ?」

今まで数限りなく繰り返された自問自答がまた続きます。

吃音の発音パターン

連続型

同じ音をくりかえす

  • わ、わ、わ、私は
  • あ、あ、ああ、あああ、ありがとう

伸発型

語頭が引き延ばされる

  • そ、そぉーーーんなことはありません
  • ど、どーーーしてですか

難発型

音がでてこない

  • ぁ・・・・ありがとう
  • ぅ・・・・(無音)

吃音がでるタイミング

  • 人前にでたとき
  • 特定の嫌いな人と話すとき
  • 初対面の人と話すとき
  • 誰に対しても

このように人それぞれあらゆるパターンがあります。

緊張した時だけどもる人もいれば、いつでも誰にでもどもってしまう人もいます。

こうした特徴をよく把握しておくことは吃音パターンを特定し克服につなげるためにとても大切です。

吃音の原因の主な区分

発達性吃音

幼児期~小学校期に発症

獲得性吃音

青年期(主に10代後半)に発症

神経因性

神経学的疾患や脳損傷、呼吸の不全、筋肉のこわばり、舌の動きなどが原因

心因性

精神的ストレスやトラウマ体験により発症

心因性吃音は相手がいることで成立する(心)

吃音で悩むことの構造は自分一人の中で起きている単純なものではありません。

吃音を聞く相手がいて初めて吃音は問題になってきます。

学校や職場などで吃音になやむ人はたくさんいます。

一方で、家で一人でいるときや家族といるときは吃音がでない人も多くいます。

アメリカの心理学者・音声病理学者・作家で吃音治療法の父とされるアイオワ大学のウェンデル・ジョンソン博士は、吃音は吃る状態だけの問題ではないとし、XYZの三つの軸からなる立方体で三つの要素を表現する言語関係図を提案しました。

  • X軸⇒吃音の状態
  • Y軸⇒聞き手の反応
  • Z軸⇒利き手の反応を元にした本人の吃音への態度

X軸に対してはアイオワ学派のいう「流暢に吃る」こと、Y軸に対しては周りがよりよい聞き手になること、特に母親が「もう一度ゆっくり言って」などと子どものことばを指摘したり批判したりせず、そのままに受け止めることを提案しました。

(※アイオワ学派は吃らずに話すことを目指す抑制法とは逆に、吃ることを奨励してどんどん話すようにし吃った状態を客観的にとらえ吃り方とその意味付けを変えていこうとする表出法を趣旨とする)

人間は心というフィルターを通して物事をとらえます。

心の中では客観的な事実よりも主観的な心象風景が優先されがちです。

そのことをXYZ軸はあらわしています。

どもりと向き合う一問一答ー言語関係図
知っていますか?どもりと向きあう一問一答

心因性吃音の本当の敵は影に隠れた「不安・劣等感」(心)

アメリカの言語病理学者ジョセフ・G・シーアンは、吃音を氷山に例えました。

水面上に浮いて周りの人から見える吃音の状態は、吃音問題のごく一部分です。

本当の大きな問題は水面下に沈んでいる、吃る恥ずかしさや不安などの感情や劣等感、話すことから逃げる回避行動なのです。

吃音という行動は変えられませんがその背景にある不安や劣等感は訓練次第でコントロールできます。

吃音というのは実はただの象徴でしかなく、吃音になやむあなたが本当に直面しなければならないのはあなたの弱い心です。

それを克服しない限り、仮に吃音がなくなったとしても他の形で不安や劣等感は顔をだしてきます。

その形は人によりさまざまで、

  • うつ
  • 不安神経症
  • 体の震え
  • 強迫性障害
  • パニック障害
  • 攻撃的な言動
  • イライラ

吃音と同じように簡単には解決できない症状に苦しむことになります。

どもりと向き合う一問一答ー吃音は氷山にたとえられる
知っていますか?どもりと向きあう一問一答

 

アレクサンダー・テクニーク-身体の不必要な緊張をとることが神経因性吃音解消の鍵(体)

フレデリック・マサイアス・アレクサンダー(1869~1955)はオーストラリア生まれの舞台俳優でした。

ところがある時から舞台で声がかすれてしまい、ひどい時は声をだすことができなくなってしまいました。

医師からは手術をすすめられます。

しかし洞察力に優れたアレクサンダーはこう考えました。

「声の使い過ぎや器質的欠陥が問題なのではなく、自分の声の使い方が原因かもしれない」

そして鏡の前で観察を続けたアレクサンダーはあることに気が付きます。

「セリフを朗読している時、首の後ろが緊張している」(自己の誤用:ミスユース

それにより頭が後ろに引き下げられてのどが圧迫され、胴体は短く縮こまり、足も緊張していることをつきとめたのです。

この首からはじまる背骨の使い方はプライマリー・コントロールと呼ばれ、動きの質を決める原動力であり心身の健康を決定します。

つまりあなたに必要なのはこういうことです。

無意識の習慣やクセにより生じる”体にとって不必要な動き”からの緊張をプライマリー・コントロールにより抑制(インヒビション)します。

その上で「首を楽に前へ上へ、背中は長く広く」という方向づけ(ダイレクション)を行います。

こうしてアレクサンダーは自らのミスユースを克服したのち、ミスユースに悩む多くの人の力になるためアレクサンダー・テクニークの教育を開始しました。

発声には首の使い方が多く関係しています。

アレクサンダーが重要視した首の使い方をマスターすることは、吃音に悩むあなたにとっても大切なことかもしれません。

吃音に悩むあなたにもぜひプライマリー・コントロールを身に着けてほしいのです。

吃音を長所に変え大成功した男「スキャットマン・ジョン」(心)

「吃音はどう治すかではなく、どう生きるかだ」

こんな言葉にふさわしいある男の一生をご紹介します。

あなたが吃音に悩んでいるならきっとすでにスキャットマン・ジョンのことは知っているかもしれません。

スキャットマン・ジョン(Scatman John, 1942-1999はアメリカ・カリフォルニア州出身のミュージシャンです。

日本では1995年に「Scatman (Ski-Ba-Bop-Ba-Dop-Bop) (邦題:スキャットマン)のデビューシングルが大ヒット。

「Su Su Su Superキレイ」(カネボウ化粧品のCMソング)を覚えている人もいるはずです。

さらにグリコ乳業のプッチンプリンのCMは

「プッチンパポペ everybody プリンプリン♪」

というキャッチーなフレーズで私の記憶にもしっかり刻まれています。

なんか楽しそうでいいですよね。。

日本国内でもアルバム売上が250万枚のミリオンセラーを記録するなどスキャットマン・ジョンは日本でも有名なミュージシャンでした。

アルバムを聴くと分かりますが、ジャズピアニストとしてジャズのテイストが好きなんだろうなと思える曲がけっこうあります。

あらためて聴いてみると当時は分からなかったスキャットマン・ジョンの奥深さが感じられて感慨深いものがあります。

私もまだ10代でしたし。。

スキャットマン・ジョンが吃音を解決した方法(心)

ジャズピアニストであった スキャットマン・ジョンは吃音に悩んでいました。

ピアノを選んだのも誰ともしゃべらなくても演奏できるからです。

しかし1984年初頭に彼は「意味のない言葉であればどもっても分からないだろう」と考えます。

そこでスキャットをとりいれた歌唱法を演奏にとりいれることを決意しました。

スキャットといえば、「ダバダバ・ドゥビドゥビ・パヤパヤ」といった即興で歌われるフレーズが有名です。

ところがスキャットマン・ジョンのスキャットは吃音症を逆手にとった、模倣が困難なオリジナリティーあふれるスキャットでした。

古いヒンドゥー教の喉で歌う歌唱法からとりいれた技法を用いて1回に4つ近く音の調子を変えるというとても珍しい歌唱法だったのです。

スキャットマン・ジョン自身が長年悩んでいた吃音によって誰にもまねできない独創的な音楽の世界にたどり着くことができたのです。

結果的にデビューシングルは世界で600万枚を売り上げ全世界にスキャットマン・ジョンの名前が知れわたるようになりました。

 

ジョンはスキャットでブレイクする直前に、もし成功すれば人前でのインタビューは避けられず吃音がでて恥をかくことを恐れました。

しかし妻のジュディから吃音に悩む自分を隠さずに歌詞として伝えるようアドバイスを受けます。

デビューシングルのScatman (Ski-Ba-Bop-Ba-Dop-Bop)も「吃音に悩む子供達が逆境を乗り越えるため、元気を与えよう」という目的のもとに歌詞が作られています。

その姿勢は成功した後も変わらず、ジョンは吃音者を支援するために設立した「スキャットマン基金(略称SF)」の活動を熱心に続けました。

1996年の「日本ゴールドディスク大賞」の賞金を日本の吃音者団体である全国言友会連絡協議会に全額寄付したり、同団体の全国大会にビデオ出演なども行っています。

スキャットマン・ジョンは吃音というコンプレックスを武器に変えただけでなく、自分自身を偽らずに等身大のありのままをさらけだしたからこそ多くの人々から支持されたのかもしれません。

Scatman (Game over jazz)

Everybody’s sayin’ that the Scatman stutters
But doesn’t ever stutter when he sings
But what you don’t know I’m gonna tell you right now
That the stutter and the scat is the same thing to you
I’m the Scatman
Where’s the Scatman?
I’m the Scatman

Everybody stutters one way or the other
So check out my message to you
As a matter of fact, don’t let nothin’ hold you back
If the Scatman can do it, brother, so can you
I’m the Scatman

Ba-da-ba-da-ba-be bop bop bodda bope
Bop ba bodda bope
Be bop ba bodda bope
Bop ba bodda
Ba-da-ba-da-ba-be bop ba bodda bope
Bop ba bodda bope
Be bop ba bodda bope
Bop ba bodda bope

みんなスキャットマンはどもっていると言う
でも歌っているときはまったくどもらないんだ
どもりとスキャットは同じだってことを俺が今すぐ伝えたいと思ってるなんてキミはゆめゆめ思わないだろうね
俺はスキャットマン
スキャットマンはどこ?
俺はスキャットマン

みんなどもっているところがあるものさ
だから俺がキミに言いたいのは
キミの邪魔をするものは実際何もないってこと
もし俺ができるならキミもできるさ
俺はスキャットマン

(和訳:桜井純)

Written by John Larkin, Antonio Nunzio Catania • Copyright © Sony/ATV Music Publishing LLC, Universal Music Publishing Group

コンサートのために世界を周ったジョンの言葉は以前よりも流暢になりました。

アルバムのプロモーションのためインタビューをしたある記者が「経歴を装うため吃音者コミュニティーを利用しているのではないか」と疑いを向けたほどでした。

スキャットマン・ジョンは自分自身をさらけ出し、言葉の発音を積み重ねることで吃音を克服したのです。

 

スキャットマン・ジョンは当初は自己受容などの精神的な側面を重視していました。

しかし、後に発話技術も重要であると考えを改めています。

私もこの意見に賛成です。

百人いれば百人の個性があります。

精神的なアプローチ、あるいは発話に関する身体的な技術アプローチのどちらが効果的も人それぞれです。

ですからあなたに合う方法をみつけてもらうためにも様々なそれぞれのアプローチ法を掲載します。

ぜひあなたに合ったやり方を見つける手がかりとしてください。

体の使い方を変えて”技術的に”神経因性吃音を克服(体)

ここからは身体技術的なアプローチによる神経因性吃音解消法を掲載します。

「楽にどもる」とは(体)

アメリカの言語病理学者、チャールズ・ヴァン・ライパー博士は

「吃音を受け入れるだけでは十分ではない。楽な吃り方を学んでください」

と、吃音を治すことではなく楽に吃ることに焦点を当てました。

  • 話すときの発語器官の筋肉の緊張をゆるめ、第一音を意識や準備をしないですぐ単純に引き伸ばして軽く言い切る
  • 難発の状態になった時は無理にださないで緊張を意識的にゆるめながら軽く発音する
  • それができないなら無理にださないでいったん休止して自分のしていることを分析してからもう一度言い直す
  • 流暢に話すのではなく、吃り方に少しでも変化があればいいと考える

といっても「楽に吃る」は問題から目を背けて逃げるようなものとはまったく違います。

話すことから逃げないで吃音をそのまま受け入れ、対話を通して人との関係を大切にする日常生活の積み重ねの中で身につくものです。

「ボディーマッピング」で楽に体をつかった発声を学ぶ(体)

うまく話そうと体の使い方を工夫したところで根本的な体の構造を理解していなければ無駄が多くなります。

まずは体の構造に逆らわず楽な発声を学ぶことが優先されます。

体の正しい構造を頭の中でイメージ化して定着させることをボディーマッピング(身体地図)と呼びます。

ボディーマッピングにより発生に関わるあらゆる筋肉や骨の構造をイメージ化することができると、ある言葉を発音できない理由が自分でも分かるようになってきます。

「今、のどの筋肉が緊張した」

「横隔膜が硬い感じがする」

ボディーマップを通してこうした発声に関わる身体感覚を育てていくことで、あなたが不得意とする発声と体の関係が少しずつ分かるようになります。

音楽家ならだれでも知っておきたい「呼吸」のこと―豊かに響き合う歌声のために

こちらははじめて発声にまつわるボディマッピングを学びたいときに概要が分かる1冊です。

まずはこの本で発声するときにどんな筋肉が使われているかを少しずつ学び、そしてそれを実際に感じていく作業をおこなってください。

音楽家ならだれでも知っておきたい呼吸のことー咽頭の筋肉
引用:音楽家ならだれでも知っておきたい「呼吸」のこと―豊かに響き合う歌声のために

音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと―アレクサンダー・テクニークとボディ・マッピング

発声に関わる部分だけでなく体全体のボディマッピングにも興味がわいてきたらこちらをおすすめします。

全身の脱力ができるようになると緊張が減って発声に関する筋肉をコントロールする能力が高まります。

DVDブック ボディ・マッピング: だれでも知っておきたい「からだ」のこと (DVD BOOK)

こちらは上の音楽家なら誰でも知っておきたい「からだ」のことを映像化したものです。

本で学ぶより映像で学ぶほうが好きなあなたはこちらをおすすめします。

翻訳が少し難ありですが、それを差し引いても学ぶことはとても多いでしょう。

うまく歌える「からだ」のつかいかた:ソマティクスから導いた新声楽教本

こちらは上の本で物足りないか、より深く詳細まで学びたいあなたにおすすめです。

発声に関わるあらゆる筋肉や体の使い方を広く深く学ぶことができます。

解剖学的な要素も多少ありますが、基本的に分かりやすいです。

著者の発声に対する真摯な態度がとても伝わってくる良書です。

発声にプラスとなるエクササイズや発声にまつわる面白い話ものっており興味深く読み進めることができるでしょう。

かなり独創的なエクササイズもあり楽しく取り組めるはずです。

うまく歌えるからだのつかいかたー紙をぐるぐるやぶりながら歌う

引用:うまく歌える「からだ」のつかいかた:ソマティクスから導いた新声楽教本

吃音の治癒-河野道弘(体)

河野外科胃腸科院長の河野道弘医師は、吃音を治すのではなく楽にどもることを訴えたチャールズ・ヴァン・ライパー博士の考えを否定しています。

吃音はしゃべり方を変えることで治癒するというのが河野の考え方です。

力まず楽に口・舌を使うようなしゃべり方をすることで河野は数十年苦しんできた吃音をついに克服しました。

吃音の克服においては完全に技術重視型といえるでしょう。

口や下の使い方に心当たりのある方は何か得るものがあるかもしれません。

動的ストレッチによる筋弛緩法(体)

こちらも体をリラックスさせることで吃音を克服する身体技術系の吃音克服法です。

言語に関係する筋肉(舌、唇、あご、のど、ほほ)をリラックスさせることで呼吸筋の緊張をほぐしていきます。

気功やヨガなどがベースになっておりかんたんに取り組める運動が掲載されています。

すぐ読み切れる量ですから手軽に試すのにもむいています。

1分声トレ-司拓也(体)

あがり症で声がでなくなる人向けの発声のためのトレーニング法です。

「のどを開く」ことで空気の通り道をしっかり確保し声帯に負担をかけないことでしっかりと声がでるようになります。

口や舌をはじめとした楽しそうな運動がたくさん載っているのでリラックスしながら楽な発声を身につけることが可能です。

メンタル面での対処法も後半に掲載されており幅広い対応が学べます。

ディサースリア 臨床標準テキスト(体)

ディサースリアとは、呼吸器・喉頭・鼻咽腔・舌・唇・あごなどの発声器官に神経・筋肉の病気により運動障害がおこり、うまく話せないことを意味します。

神経因性吃音のあらゆる原因をさぐるためにこのディサースリアの知識を用いるとうまくいく可能性があります。

なぜなら、ディサースリアは発声・発話できない状態について学問的にあらゆる角度から研究されているからです。

ただし、幼児期~小学校期などに発症した発達性吃音はディサースリアとは別なものとみなされています。

ですから活用できるとすれば、神経因性吃音の人だけに限定されるかもしれません。

当然、心因性の吃音へのアプローチは掲載されていません。

ですが、身体的な機能による吃音について色々とヒントをもらえる一冊ではないかと感じています。

専門家向けのやや難しい本ではありますが、辞書的に使うとよいでしょう。

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あるがままの自分をだして心因性吃音を克服(心)

ここからは精神的・心理的に吃音を克服する様々な方法を掲載します。

竹内敏晴「からだとことば」の意味ー言葉は音声ではない(心・体)

竹内敏晴はことばは音声ではないと言います。

ことばは心と心が触れ合うツールであり心と心のふれあいがあって初めて影響力をもちます。

ですから心のこもっていないやりとりばかりしているとことばの意味・力は0に近づいていきます。

あなたのまわりにも大声を出しているのにちっとも心に響かないことばかり言う人はいませんか?

それはその人がまわりの人と心を触れ合わせていない・あるいはできないことが原因です。

ことばはあなたの欲求を満たし他者との交流を通してあなたを成長させてくれるすばらしいツールです。

ことばを発する前にまずあなたの欲求がなんなのか、そして相手に何を求めているのかを明確にすることが重要です。

これが分からないままなんとなく話していると、なんだか説得力のない消極的な言葉が生まれてきます。

これは相手の心に響かない説得力のないことばです。

そしてそのことが自分にも帰ってきます。

「私の話すことはあまり大切ではないのかな・・・・」

それはちがいます。

あなたの話す目的、そしてその根幹にある相手と話すことの意味をつきつめればことばはきっと相手の心に深く響いていきます。

相手とただたわいもない話をするだけで元気がでるのなら、

「あー、元気になった!」

と実感をこめて相手に伝えてあげれば相手はあなたが望むたわいもない話の意味、そしてあなたの心を受け止めてくれます。

心と心を響かせるために言葉と体をどう使えばいいのか、それを教えてくれるのが竹内敏晴の「からだ」と「ことば」のレッスンです。

この考えに沿ってあらためて吃音をみつめなおしてみると、今まで見過ごしていたことがたくさんあることに気づきます。

どもらずうまく話すことだけが最終目的になってしまって相手と心を通わせることが二の次になっていませんか?

確かにうまく話せたほうがいいかもしれません。

でもそのことだけに気をとられすぎていたら、ことばの一番大事な部分である「相手とのエネルギーの交換」がおろそかになっていきます。

人と心を通わせることが最終目的であり、うまく話せることはそのための1ツールに過ぎません。

そこに気づくことができれば吃音はあなたにとって一番気がかり・一番嫌なことではなくなっていきます。

あなたが笑顔でいるだけでエネルギーをもらえる相手だっているはずです。

そのエネルギーのやり取りの延長線上にある一地点にことばという問題があるだけなのだという認識をもてるかどうかが鍵となります。

そういう意識をもって竹内敏晴流のことばのレッスンに取り組めば、ことばは今よりあなたの心をしっかりと相手に伝えてくれます。

言葉が伝わらないからといって感情をやりとりすることまであきらめてしまえば、あなた自身が吃音のある自分を苦しめていることになってしまいます。

そのジレンマから脱出するためのヒントが竹内敏晴の書籍にはあふれています。

  • 話しかける
  • 緊張と身構えをほどく
  • 体への気づき
  • 声とことばのレッスン
  • 出会いのレッスン

からだの使い方や話し方を通して竹内敏晴が伝えてくるのは「貧困なコミュニケーション」を克服することに他なりません。

あなたが思うコミュニケーションが本当のコミュニケーションとは限りません。

人と人は予想を超えたところで惹かれあっています。

その隠れた自分のすばらしさを引き出すために吃音がいいきっかけになってくれると考えることもできます。

「うまく話せない不器用さは言葉を発することに対する誠実のあらわれ」であり、あなたの有力な武器になる可能性があります。

あなたが注視しているところに相手も注視するとは限りません。

人は千差万別であり価値観も千差万別です。

そうしたコミュニケーションの奥深さを再考させてくれるでしょう。

これは「からだ」と「ことば」と「人生」のレッスンです。

 

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鴻上尚史-感情が伝わる声をだせるようにする(心・体)

劇作家・演出家である鴻上尚史(こうがみしょうじ)の考える声も、基本は竹内敏晴といっしょです。

「正しい発声とはあなたの感情やイメージがちゃんと表現できる声を手に入れること」

しかし鴻上尚史の発声は演出家であることもあって、言葉をしゃべる訓練にも重点がおかれています。

また、活舌が悪いことに対し鴻上尚史は4つの原因をあげています。

  1. 身体機能の問題(医学的なものでごく少数)
  2. 言葉をしゃべる訓練が不足している
  3. 1回も大切な話や重要な話をしたことがない
  4. 言葉を根本のところで信用していない

1は歯のかみ合わせやのどの構造など、ごく少数しかあてはまらず専門的治療を受けるしかありません。

2は意外なようですが、吃音がなくても聴きとりづらい発音をする人はたくさんいます。

役者・司会・アナウンサーでもない限り発音をちゃんと練習する機会はありませんからただしい発音ができていなくてもそれほど不思議ではありません。

3も意外な感じがしますが、本気で相手に伝えようと思う時の言葉は自然と気迫があり説得力のある雰囲気がかもしだされます。

この1回の発言で何としても相手に伝えなければならないような重要な話は大切に語ろうとするものです。

4は少し哲学的ですが、言語よりもボディーランゲージや芸術表現などでしか自分を表現できない人もいます。

そういう人にとって言葉はむしろ面倒なツールでしかありません。

しかし鴻上尚史はそんな人こそしっかり話すことをすすめています。

「とりあえず、言葉を信用してみませんか?そうすれば、言葉にできないものが見えてきますから」

発声と身体のレッスンー発声イメージの種類
発声と身体のレッスン 増補新版

鴻上式の発声は声が持つ精神的な側面にアプローチしながらも呼吸・体の使い方・舌の使い方・アレクサンダーテクニークのセミスパインなど身体技術的なアプローチもあわせもった両立型です。

「セミスパイン」とは?-あおむけ寝で学ぶNon-doingで猫背改善大作戦

数多くのストレッチや運動がたくさん図解で説明されていますので、すぐに実行できます。

どちらかというと身体的な側面を重視しているような印象を受けますが、精神的なアプローチに関しては竹内敏晴に通じるものがあるためこちらに掲載しました。

実際に竹内敏晴さんの名前も書籍内にでてきますのでよく研究しているのでしょうね。。

アサーション・トレーニング(心)

アサーション(アサーティブ)とはなんでしょうか?

かんたんにいえば

「相手も自分も不快にしないイエス・ノーの伝え方を用いることで自分も相手も尊重するコミュニケ-ション法」

のことです。

どうしてもノーが言えない人っていますよね。

「できるだけ相手の期待に応えたい」

「相手に対してノーと否定することは相手自体を否定しているようで言いたくない」

気持は分かりますが、実際相手はあなたが意思表示しなければいけない場面でノーと言ったからといって気分を害するようなことはありません。

もしあなたが常識的におかしくない範囲で自分の意見を言ったことにより相手が態度を変えるようなら、相手のほうがおかしい可能性があります。

そんな時は友達や付き合う仲間を考え直す時かもしれません。

相手を尊重しすぎて自分を軽んじるコミュニケーションはあなたに無駄な緊張を強いてきます。

本音が言えないってストレスなんですね。

そのストレスは確実に体を緊張させて体のスムーズな働きを妨げます。

その一つが吃音である可能性は十分にあります。

「あなたの意見は重要で、私の意見は重要ではない」

から

「あなたの意見は重要で、私の意見も重要だ」

というスタートラインにもどるためのコミュニ-ション方法を知ることが大切です。

  • 「その意見はするどいね。でも私はこう思うんだ・・・」
  • 「あなたの率直なところを言ってくれてありがとう。実のところそれは私の意見とは違うので参考になるよ」

こうしたコミュニケーションのベースにあるのは、あなたは相手と対等な一人の人間であるということです。

  • 目上の人だから
  • 優秀な人だから
  • 肩書のある人だから
  • 美人な人だから

それでもあなたと同じ一人の人間です。

人間対人間の対話ですから、あなたはあなたの権利を十分に守っていいんです。

ぜひ相手を傷つけない自己主張法をみにつけて無駄な緊張をなくしてください。

あなたは相手に本音を言ってリラックスしていいんです。

そうして

「相手と考えがちがうことって実はとても楽しいんだな」

という原点にもどってほしいのです。

「まず話せないんだからそんなの必要ないよ」

そうではありません、あなたらしく生きる手段を身につけるためのアサーション・トレーニングです。

あなたはあなたの意見を言いながら生きる権利があります。

 

 

メンタルリハーサル法(心)

メンタルリハーサル法は「話すためのテクニックを使って話す練習をする訓練法」ではありません。

メンタルリハーサル法は、「頭の中」で話すことをふくめた行動場面を視覚的に想像します。

つまり、声をださずに話す練習をする脳科学をうまく利用した訓練法です。

その想い描いた場面で現実に適応した行動をとれるようにするものです。

実施している本人にとっては、実際に行動している状態に近い状態を頭の中で経験することができる手法です。

あらゆる療法のよいところだけをとったハイブリッド式ともいえるメンタルリハーサル法の具体的内容にせまっていきます。

メンタル・リハーサル法の特徴

発話訓練の禁止

メンタル・リハーサル法では発話訓練は禁止されています。

発話は日常のたわいもない会話をしている感覚で行うことが大切です。

しかし発話訓練をすると、不自然な発音をくりかえすことでおこる「発話を無理にコントロールしようとする自意識」が逆に吃音からの脱出を困難にしてしまいます。

環境調整法

環境調整法は基本的に児童を対象に作られています。

乞音児をとりまく外的環境(言語環境と養育環境)を整えて、吃音児に対する周囲からの発話行動への干渉と過剰な心理的圧力を除きます。

これは家族が吃音時に気が付かないうちに心理的プレッシャーを与えてしまうことを防ぐためにあります。

正しい援助の環境を整えて、吃音を改善しやすい環境を作りだすことを優先します。

同時に、安定した母子関係を確保することによって間接的に吃音児の内的環境(心理的状況)を整えます。

こうして吃音児に安心感を与えながら吃音の改善を目指します。

最終的な目標は以下のようになっています。

  1. 内的環境の調整により自然で無意識な発話を日常生活でたくさん経験させる
  2. 基本的感情・情動の安定を図ることなどにより吃音をなくす

このようにメンタルリハーサル法は

「吃音者の周りにいる人間の吃音者に対する関わり方・吃音者本人の思考や行動」

を変えていくことで吃音の克服に近づいていく療法といえるでしょう。

メンタル・リハーサル法ー環境調整法
間接法による吃音訓練 自然で無意識な発話への遡及的アプローチ ー環境調整法・年表方式のメンタルリハーサル法

 

メンタルリハーサル法と認知行動療法との違い

認知行動療法とは、「思考に対する認知を変えることで問題解決を図る心理療法のこと」をさしています。

認知行動療法を吃音に対して使うこととメンタル・リハーサル法とは共通点が多くありますが相違点もいくつかあります。

認知行動療法は自己や吃音に対する認知の仕方を自己の意思で気づき変えようとします。

この点は認知行動療法とメンタル・リハーサル法で共通しています。

ではメンタル・リハーサル法にしかない特徴とは何か?

系統的脱感作

メンタル・リハーサル法では過去のエピソードに結びついた否定的感情・情動反応を系統的脱感作で弱めていきます。

系統的脱感作法(けいとうてきだつかんさほう)は南アフリカの精神科医ジョセフ・ウォルピが考案した行動療法の1つです。

不安の対象となる状況・物事を吃音者が感じる刺激の強さ順にならべかえた上で、脱感作と呼ばれるリラクセーションにより十分に筋肉がリラックスした状態で刺激レベルの低いものから順に取り組み暴露していく技法をさしています。

このようにメンタルリハーサル法は心理的な側面だけでなく身体的なアプローチもふくんでいます。

発話時の脳状態にアプローチ

自然で無意識な発話を目的として頭の中で発話をイメージすることで、吃音者の発話に対する強い作用を作り出しています。

メンタル・リハーサル法はこのようにイメージ・トレーニングの側面があります。

年表方式のメンタルリハーサル法とは?

メンタル・リハーサル法にからめて自分の幼少期から現在までの時系列記憶をイメージすることでより強い効果を狙ったものが年表方式のメンタル・リハーサル法です。

頭の中で幼児期から現在までのエピソード記憶に関わる場面を想像し、現在の日常生活で類似したものがある場面を選んでいきます。

その場面に適さない行動・適した行動や自然な発話を数多くイメージしていくことで自然な発話を再学習します。

吃音になる過程には幼児期から始まる、吃音に対するマイナス・イメージのすりこみが自己からも他者からも繰り返し行われています。

たとえばあなたが小学生の時に、教室で教科書を音読するよう指示されてうまく読めずどもってしまうたびごとに

「自分は人よりも劣った生きる価値のない人間だ」

と自分に言い聞かせていたとしたらこれが正にマイナス・イメージのすりこみです。

こうした場面を想像しながら系統的脱感作をおこなうことですりこまれたイメージを身体から変えていきます。

同時に日常で発生する吃音悪化につながる

  • 否定的側面への過度な注目
  • 吃音悪化につながる意図的身体操作
  • 嫌な感情を繰り返し想像
  • 発話等への必要以上の注目

こうしたことをさけることで吃音を改善しようとする方法です。

メンタル・リハーサル法ーメンタル・リハーサル法の大枠と時間的側面

メンタルリハーサル法による成人発達性吃音治療の2例

メンタル・リハーサル法の欠点

メンタル・リハーサル法の欠点は、応用的に使うには結局作成者である都筑澄夫さんのカウンセリングを受けるしかないという点です。

書籍を読んで自分なりに応用していくことも可能だとは思いますが、近道をしたい人や、学ぶことが苦手な人にはしんどいかもしれません。

ですからメンタルリハーサル法を応用した教材などを利用するのも一つの手段です。

 

 

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